2014年4月6日日曜日

実占象意 


         
         ***** 実占象意 火天大有の上爻 *****
 

 〔STAP細胞〕の論文に疑いが持たれ始めた頃に、主任研究員の今後も含めてこの研究の今後如何

で、立卦をしてみました。
 
 遇卦は、火天大有の上九(☲☰)でした。
 
 卦の出現した瞬間に、小林喜久治先生のことを思い出しました。先生は実占家であられ、上野の

夜の路上で30年以上に亘り多くの方を鑑定されました。或る時に同席した酒宴で、いつもの易談義

の中の事です。火天大有の上爻は気を付けないと誤占をするよと云われました。
 
 それは「筮前の審事」(占う以前の内容)が良い時には爻辞どおりの結果となるが、辻褄(つじつま

)が合わない話や良くない話は、そうならないと云われました。小生も街占をしておりましたので、

この卦爻と山天大畜の上九(☶☰)はそう簡単には、爻辞どうりに予言はいかないと思っていました

。そこを指摘してくれたのは大いなる喜びでした。
 
 実占は、易経の解釈だけでなく筮前の審事やそこから絞った占的(占う中心のテーマ)が、重要な

座標軸となります。

  さて得卦に戻りますが、研究員女史の年齢や知名度、経験などを総合しますと火天大有は本義の大

きく有(たも)つよりも、この場合は荷が重いと判断できます。火天大有は下卦乾(☰)の公け、その

上卦離(☲)の明らかや明晰で、公的な地位が築かれていてこそ実力が発揮できます。《ローマは一

日にして成らず》です。その経験や費やした時間がないと、逆に大きなものを背負えずに潰れてし

まいます。
 
 上爻の爻辞が『天よりこれを裕(たす)く、吉にして利(よろし)からざるなし』と最良のことを云

っていても、卦の構成の小成卦、下の乾から上の離へとの流れである正論をもってし、また乾の公

で積み重ねてきたものが離という名誉は得られるようにはなりません。反対に乾という社会や世間

が、離で離(はな)れていったりして大火傷をします。爻辞とは逆の事が起こります。陽と陰がひっ

くり返った形です。勿論この場合は残念ながら後者の判断といえます。
 
 火天大有の卦は王道や正統の意味があります。したがって、この研究自体は正しい事といえます

。また君位が陰爻なので女社長の卦ともいえます。しかし上爻は時を誤ったといえますので、まだ

熟しきっていないのに実を取って食べようとしたくようなものです。離には争う象意がありますの

で、所属している組織からも含めて大きなパッシングにあっています。騒動が落ち着いたら場所が

変わっても、再び研究の場を得られればと思っております。学問や研究、また特許などの世界は外

から見るほど綺麗なものではありません。中では名誉欲や金銭欲が渦を巻いています。その中で己

を保つのは容易なことではありません。一陰五陽卦なので、一陰が他の総ての五陽に良い顔をしよ

うとすると失敗します。この負の状況を却って良い機会と考え直して、新しい次元へ進んで頂きた

いと思います。
 
 ここでは得爻が上爻ですが、火天大有の卦を構造的に読んでいきたいと思います。上爻を否定的

に解釈しましたので、各爻全体も否定的な意味が強くなってきます。
 
 得爻が上爻であったという事は、その少し以前は五爻といえます。小象伝に『信もって志を発す

るなり』と研究の発表を云っております。しかしその後に『威如の吉なるは』と威厳の伴う研究結

果になるには、『易(あなど)りて備(そな)うるなければなり』といっており準備が万端でなければ

いけないと、釘を刺しています。やはり《ネイチャー》のような世界レベルのフィールドでは、発

表された研究は杜撰(ずさん)だったようです。
 
 では他の爻を初爻から見ていきます。初九は『害に交わること无(な)し』で、やはり公的な機関

では名誉欲や利害など色々な「害」があるようです。『艱(なや)めば則(すなわ)ち咎(とが)なし』

で上司や先輩などの云うことを素直に訊く反面、片側では疑るぐらいで騙されないといっておりま

す。大有という大きな組織の中で生きていくには何事も一筋縄では行きません。
 
 二爻は『大車以って載す』で大きな車ですので本人にはとても才能があるといっています。しか

し小象伝の後の句に『中に積みて敗れざるなり』と車は大きいが積載オーバーはいけないと注意し

ております。ここで実力以上の勇み足があった模様です。安易に回りの煽(おだ)てなどに乗っては

いけません。
 
 三爻は『公もって天子に亨(きょう)せられる』で、ここでリーダー格と成っていくようです。し

かし『小人は克(あた)わず』でその立場に適任かどうかに疑問符が付きます。小象伝ではリアルに

『害あるなり』といずれ禍が起こるといっております。それらが起こる時が〈害応〉(応ずる爻が陽

と陽の反発)となっている得爻の上爻といえます。時には己(まだ小人)を知って、天子の呼びかけを

断ることも大切です。
 
 四爻は『その彭(さかん)なるに匪(あら)ず』と、この爻は上卦で君位の五爻に近いが、まだ力量

が無いと初句から諌(いさ)めております。実力があると錯覚しないことです。『咎无し』の間違い

が起こらないようにするには、『明弁にして晢(あきら)かなればなり』でしっかりと分析し証明す

ることが必要であるといっております。この段階で論文としての緻密さや証明という明晰さに欠け

たようです。
 
 五爻は前述の準備不足です。
 
 以上、火天大有は公共的な卦なので〔STAP細胞〕は、社会から求められる大変に価値のあるもの

です。現状は混乱しておりますが、いずれ未来に向けて再び研究の火を消さずに、医療の面からも

含めて社会を照らす大きなと灯と成ってもらいたいものです。
 
 得卦得爻より、大先輩の実占解釈における、爻卦の意義の社会学的選択を思い出しながら、判断

をさせて頂きました。実社会に対する活きた象意選択は漢易的(象数易)判断が基礎となります。



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