2012年11月18日日曜日

周易とiPS細胞

周易とiPS細胞 (2)
 【Blog‐1の続き】
 またiPS細胞は医療の現場でも期待されています。それは再生医療です。患者さんからiPS細胞を作りそれをその人の病気の治療や臓器の再生へと用いる方法です。夢のような治療法で難病で苦しんでいる方には大きな希望といえます。また難病は病気自体が一般の病気と違い個別化した症状として現れることが多いようです。その人の細胞から取り出し作られたiPS細胞をその人の治療に有効に用いることは、一般に薬という他からの一般データを基準にして治療をするよりも、本人の細胞を用いますので格段に優れた適合性といえるでしょう。これを周易の実占の角度から考えますと、卦や爻の基本的意義は理解として大切ですが、実占という現場においては《筮前の審事》や絞り込まれた《占的》の角度から得卦への再解釈が必要となってきます。卦爻の基本象意をその実占で出現した卦爻に安易に重ねても的占をするとは限りません。筮前の審事や占的には問占におけるそれぞれの社会的な背景があります。それを加味した卦読みが一番の的占となります。実占の判断は基本象意の上にそこから発表をさせ創作されたそれぞれの状況象意が乗ってこそ優れた予言となります。これは病気の治療において、本人に対し他で実験や検証された薬の関係だけの治療法と、本人の細胞から作り出されたiPS細胞を用いた本人に一番合った治療との違いともいえます。治療の中に個人や個体性を用いた新しい治療ともいえます。漢方では患者の個体性を大変に重要視しますが西洋医学では法則性を重視しますので個体としての特長が逆に軽視されてきました。iPS細胞を用いる治療法はそれらにも革新的な道を開くものといえるでしょう。易の世界でも社会が複雑になったり個人の生き方が多様化している現代では、占断も個々の問題や立場によって判断方法が多角的になってきます。これはiPS細胞を個人個人の治療に用いていく医療の個別化と同様のように思われます。
 またiPS細胞そのものが同一のものではなく個別化している部分があるということは、十九世紀後半からの現代思想への展開とも似ております。神や宗教などの古典的な絶対思想(現状の西洋的投薬治療)ではなく現在の問題や個人の立場など現象学や実存主義などといわれる人間社会や現在と相対している思想群(iPS細胞での将来の治療)と似ております。現代の諸々の問題は一つの絶対的な答えがあるのではなく、個人個人がそれぞれの問題を深めていくことによって却って問題の中から普遍性が見つかってきます。一般論や絶対的宗教を安易に持ち出しても簡単には解決をしません。この問題の初期の苦悩はニーチェといえます。言語学者のソシュールは文法を絶対化して考えずに言葉を前後の文脈よりその意義を判断しました。それが後に現象学や実存主義へと発展していきます。物理学もニュートンの古典力学からアインシュタインの相対性理論へと展開していきます。これらは絶対論から抜け出し個々への相対的な思考への発展といえます。
 繰り返すようですがiPS細胞の研究が今後発展をして医療に多大な貢献ができるようになるとすれば、難病における医療の個別的な治療という個人個人の細胞に合わせた相対的な治療へと発展をしていくのではないかと思います。
 もう一つの面で周易での問題における相対化は、占断する問題に対し前述した初期化と重なりますが、偶然という方法で卦爻を求めることといえます。偶然を用いることは、その問題に対して類型化して考えることはできません。ですから六十四卦の思考方が必要となってくるのです。易占という言葉は旧い様に感じられるかもしれませんが、実際の筮竹を用いるという偶然の行為は、その問題に対し相対的なので問占者に対する答えは個別的ともいえます。iPS細胞を用いた未来の医療と周易実占での判断法は個体化という点においてとても似ております。
 iPS細胞の研究のこれからの未来に期待を寄せると共に、周易のもつ奥の深さにも大変に驚きを感じました。山中教授の今後の研究が社会に生かされることを切に願う次第です。   (終わり)                                                                                                                         
   易学館では実占を希望される生徒さんを募集しています。 ダイナミックな周易を味わってみませんか!                                                                                                          eb-3

0 件のコメント:

コメントを投稿